「人員不足だけれども、誰でも雇うわけにはいかない」とか、「ビジネスが厳しくて新しいスタッフを迎え入れる余裕がない」といった理由により、雇用の拡大に踏み切れないケースは実に様々ですね。
本記事では、人手が足りていないにもかかわらず採用に二の足を踏む理由や、深刻な人手不足に悩む経営者のジレンマを解説し、これらの背後にある原因を掘り下げていきます。ご自身の事業にどのような事例が該当するかを考慮し、人手不足による倒産リスクを回避するための予防策や対策にぜひお役立てください。
人手不足なのになぜ雇わないのか?
「人手が足りないのに会社が人員を補充してくれない」という従業員の嘆きは、人員不足により業務が多忙になり、休憩が取れなかったり残業が増えたりといった状況が常態化することから、職場に不信感を抱き、退職を検討する人も増えています。
また、求職者の中には「人手不足なはずだし、ずっと募集がかかっている企業なのに採用してもらえなかった」といった声もあり、転職サイトには「本当に人手不足なのか」「選り好みしているのではないか」といった疑念も広がっています。
それでは、事業者が人手不足を感じながらも新たな人材を雇わない(雇えない)理由はどのようなものがあるのでしょうか。また、新規採用以外にどのような方法で人手不足を解消しようと考えているのでしょうか。
「人手不足なのに採用できない主な理由」
1. 経験者求人が増加傾向にある
即戦力を求める企業が増え、未経験者を採用しても定着しないリスクがあるため、「経験者求人」が増加しています。
2. 人材の定着率の低下
終身雇用の減少や多様な働き方の求められる中、採用した人材が定着しづらくなり、採用に慎重な姿勢が見られます。
3. シニア世代の雇用問題
シニア層の雇用を進める法改正がある一方で、知力や体力の衰えが懸念され、企業が慎重になる要因となっています。
4. 人件費を賄う売上をたてられない
人件費が高額で、それを賄う売上が見込めない場合、新たな雇用に踏み切れません。
5. 雇用ではなくツール導入で対応できる業務の拡大
ITツールの導入により業務を拡大し、人手不足の解消や業務効率の向上を図る選択肢が増えています。
6. 雇用ではなくBPOで対応できる業務の拡大
BPO(アウトソーシング)を活用してノンコア業務を外部に委託し、業務の拡大やリソース不足の解消を目指す動きがあります。
7. 事業計画の見通しが困難
不確実性の高い状況下であるため、事業計画の見通しが立たず、新規採用に慎重なスタンスが取られることがあります。
これらの理由について、以下に詳しく解説していきましょう。
人材不足に陥りやすい会社の特徴
人手不足に陥る原因は、外部的な要因だけでなく、内部的な特徴も大きく影響します。以下に、内部的な特徴から人手不足に陥る原因を考察します。
採用条件が不適切:
採用条件が適切でない場合、求める人材像が不明確であるか、採用プロセスが不十分である可能性があります。社内でのヒアリングを通じて、採用ターゲットを具体的に明確にし、求人情報や選考基準を適切に設定することが重要です。適切な採用条件の下で採用活動を進めることで、ミスマッチや採用の難航を回避できます。
労働環境が整備できていない:
労働環境の整備ができていない場合、社員の流出や健康問題が増える可能性があります。長時間労働や働き方の不自由さ、ハラスメントなどが原因で社員のモチベーションが低下し、結果的に離職が増えることがあります。労働環境の向上に努め、社員の声に耳を傾けることが必要です。
属人的な業務が多い:
業務の属人化は、知識やスキルを特定の個人に依存させることで、その人が不在になった際に業務が滞る可能性があります。これにより、急な退職や休暇などに対応できなくなります。業務の標準化や共有化を進め、知識や情報の共有を促進することで、業務の柔軟な対応が可能となります。
生産性が低い:
生産性の低さは、長時間労働や働き方の問題が背後にあることがあります。日本の長時間労働文化や、成果主義でなく労働時間主義が残る企業では、生産性が低下しやすい傾向があります。働き方改革を進め、成果主義や柔軟な働き方を導入することで、生産性向上が期待できます。
これらの特徴を踏まえ、企業は適切な採用条件の設定、労働環境の整備、業務の標準化、働き方改革などを進め、内部的な問題に対処することが人手不足の克服につながります。従業員の声を受け入れ、改善策を進めることが重要です。
人手不足は雇用だけの問題ではない
人手不足の問題は複合的で、単に雇用の増加だけでなく、企業を取り巻く様々な社会的・内部的な要因が影響しています。以下は、人手不足の原因や解決策に関する追加の考察です。
社内環境の改善:
従業員が働きやすい環境を整えることは、人手不足の解消に直結します。労働環境の向上、ワークライフバランスの充実、キャリア開発のサポートなどは、従業員の満足度を向上させ、離職率を低減させる要因となります。また、柔軟な働き方や働きやすい制度の導入も検討されるべきです。
ITツールやBPOの活用:
技術の進化により、ITツールやBPO(Business Process Outsourcing)などを活用することで、業務の効率化やコスト削減が可能です。これにより、従業員が本来の専門性に注力でき、非効率な業務を自動化・外部委託することで、人手不足への対応が可能となります。
働き方改革の推進:
フレキシブルな働き方やテレワークの導入は、現代の働き方に適応する上で重要です。これにより、地理的な制約を軽減し、人材の柔軟な確保が可能になります。また、働き方改革は企業のイメージ向上にも寄与し、優秀な人材の獲得につながります。
教育・育成の強化:
自社での教育・育成プログラムの充実は、未経験者や新卒者の採用を促進する一環です。経験者だけでなく、ポテンシャル採用にも注力することで、将来的な人材不足への備えができます。
ダイバーシティの推進:
男女平等や異なるバックグラウンドの人材を活かすために、ダイバーシティの推進が重要です。多様な人材を受け入れ、その多様性を活かすことで、企業は柔軟かつ創造的な解決策を見つけやすくなります。
地域社会との連携:
地域との連携を強化することで、地域社会の人材を活用する道が開けるかもしれません。地域に密着し、雇用の場を提供することで、企業と地域社会の双方にメリットが生まれます。
これらのアプローチは単独ではなく、総合的な施策が必要です。企業は変革と柔軟性を持ち、社会の変化に即応しながら、持続可能な人材戦略を構築していくことが求められています。