「定時で帰る方って、仕事ができないんでしょ?」
「あの人、仕事能力ないくせに、定時ピッタリで帰ってくるんだよね…!」
「私だって仕事できるくせに、なぜか残業しているのに、彼は定時で帰るって信じられないわ!」
仕事できないという固定観念が、いまだに一部の人たちの中で根強く残っているようですね。
おそらく、あなたの勤務先でも同様の考え方が広がっていることがあるでしょう。
そして、そのためか、何となく強制的に残業しなければならない雰囲気が漂っていることもあります。
もちろん、職場には定時で帰る人も存在します。
その中には・・・
仕事が未完了なのに、他の人に押し付けて定時で帰る人
仕事がスムーズに進み、早く終わってしまって定時で帰る人
といった2つのタイプが存在します。
これらの違いによって、話の流れも全く異なってきます。
この記事では、そういった背景を踏まえつつ、
「定時で帰る人=仕事できない」という固定観念は本当なのか?
について考察していきます。
「本当に仕事ができない」人が定時で帰るのは良くない
「定時で帰る人は仕事できない!」という言葉が出た時には、実は2つの可能性があります。
まず考えられるのは、「本当」に仕事できないパターンです。
この場合、言われている人は実際に仕事が遅く、まだたくさんの仕事が残っているにも関わらず、定時に帰ってしまっている状況です。
率直に言って、これは好ましくありません。
仕事が終わっていないのに定時で帰る社員がいる場合、残りの仕事を周囲の同僚や上司が引き受けることになります。
当然、同僚や上司も他の社員の仕事をやりたくありません。
そのため、「あの人は仕事ができないのに定時で帰るなんて!」と憎悪の念を抱かれても仕方ありません。
一方で、定時に帰ることは社員の正当な権利だと思われる場合もあります。
実際には、「残業させること」自体は違法ではありません。
ルールが変動する場合もありますが、一般的には労使間協定(サブロク協定とも呼ばれる)により、月に45時間、年に360時間の残業が認められます。
したがって、仕事ができない社員に対して、決められた時間内であれば残業をさせることは問題ありません。
さらに、社員は会社からの業務命令に従う義務もあります(一般的には労働契約によって定められます)。
つまり、単に会社にいるだけでは不十分であり、指示された仕事を適切にこなす必要があります。
この義務を違反すると、懲戒処分などのペナルティが科せられる場合もあります。
極端な例を挙げれば、毎日会社に出社しているものの、指示や命令に一切従わず、何の仕事もせずに時間を無駄に過ごし、定時になったら退社するという行為は完全に問題です。
以上の情報や考え方をまとめると、仕事ができない社員が定時で帰ることは、基本的には好ましくありません。
もちろん、どんな状況でも絶対に定時帰宅が許されるわけではありません。
たとえば、社員には理不尽な命令に従う義務はありません。
そのため、絶対に完了させることが不可能なほど膨大な業務をパワハラ的に押し付けられ、それをこなすことができない場合、その業務命令は無効になり、問題ありません。
しかし、ケースバイケースで状況が異なるため、考えるのは難しいです。
ただし、一般的で常識的な範囲の仕事を任されており、それが終わらないうちに定時で帰る場合は、「定時で帰る人は仕事できない」と言われても仕方ありません。
最終的には、仕事の質と効率を評価する必要があります。
もし、定時に帰る社員が仕事をきちんとこなし、成果を上げているのであれば、定時で帰ることは問題ではありません。
仕事の能力や成果は、働く時間の長さだけで測ることはできません。
重要なのは、仕事を適切に計画し、効率的にこなすことです。
たとえば、定時に帰ることができる社員は、効率的な時間管理や優れたタスク管理スキルを持っているかもしれません。
彼らは、仕事の優先順位をつけ、効果的な作業方法を見つけ出すことができるかもしれません。
また、定時に帰ることによって、仕事とプライベートのバランスを取ることができ、リフレッシュする時間を確保できるかもしれません。
このような状況では、「定時で帰る人は仕事ができない」という言葉は当てはまりません。
最終的な評価は、社員の仕事の成果やパフォーマンスに基づいて行うべきです。
それに加えて、労働環境や労働時間の適切な管理を行い、全ての社員が仕事とプライベートのバランスを取ることができるようにサポートすることも重要です。
定時で帰ることを否定的に捉えるのではなく、結果と成果を重視し、柔軟な働き方を受け入れる風土を醸成することが大切です。
優秀なので定時で帰っているケースも多い
逆に考えると、「優秀なので定時で帰っている」ケースも存在します。
単純に、自分の担当する仕事が完了したため、定時に帰っているのです。
この場合、「定時で帰る人は仕事できない」という言葉は、まったくの誤解です。
優秀な人が定時で帰るので、当然ですよね。
また、同じ職場にいて、その人が優秀であることが明らかな場合もあります。
したがって、それでも「この人は仕事ができない!」と主張するのは、その人に対する「嫉妬」の表れではないかと思います。
しかしこの場合、仕事ができないのは当然「言っている側の、定時で帰れない人」です。
あるいは、「定時で帰るなんて許せない!」という意味で言っているのかもしれません。
しかし、個人的には優秀な人が定時で帰ることは、まったく問題ありません。
自分の仕事が完了したから帰るのに、何が悪いのでしょうか?と思います。
優秀な人が定時で帰ることは、まったく問題ありません!
このように主張すると、「定時で帰る人は仕事できない」という意見の反論がおそらく寄せられるでしょう。
例えば、「帰る前に他の仕事もやるべきだ」「上司が残業しているのだから、上司が帰るまで残るべきだ」「定時で帰るのは印象が悪いから駄目だよ」といった反論があるかもしれません。
それでは、それぞれの反論には理由があるのでしょうか?
優秀だから定時で帰ることは本当に問題なのでしょうか?
以下で考察してみましょう。
よくある主張①:他の仕事もやれ
デキる人に対して「定時で帰る人は仕事できない」という言葉が出る場合・・
自分の仕事が終わったなら、他の仕事もやればいいんじゃない?
これが、一部の人がよく主張する考え方です。
他の仕事とは、例えば同僚や上司がまだ終わっていない仕事や、誰がやってもいいような仕事などです。
そして、仕事が速くてさらに何時間もの残業をこなし、周りの仕事まで一挙に引き受けて全てこなすことが「仕事のできる人」だという考え方が根底にあるのかもしれません。
しかし、残業してまで自分のもの以外の仕事をする必要はありません。
これは常識的に考えても当然ですし、残業の根拠となる「36協定」においても通常、残業は業務上の必要性がある場合のみと定められています。
36協定の内容は個々に異なるため一概には言えませんが、「どんな場合でも無制限に残業をさせられる」なんて協定は存在しません。
さらに、社員を働かせる根拠となる「労働契約」や「就業規則」においても、社員をどのように働かせることができるかは細かく規定されています。
そして当然ながら、「一人の社員に無制限に仕事を押し付けていい」というルールは存在しないはずです。(もし存在する場合、その契約自体が違法となる可能性が高いでしょう)
以上の理由から、自分が本来やるべきでない仕事のための「業務上の必要性がない残業」は、論理的に見てもやる必要がありません。
無条件に会社にすべてを捧げる必要はありません。
また、別の視点から考えると、会社というのは立場が同じなら仕事のできる・できないに関わらず給料は同じになる傾向があります。
ですから、できる人に大量の仕事を押し付けてデキない人の負担を軽減するということをすると、その会社はデキる人にとって「割に合わない職場」になっていきます。
そして、デキる人は他の場所でもやっていけるため、そういった扱いを受けた場合は早々に辞めることも多いです。
能力の高い人だけが一斉に退職する場合、この「給料が同じなのに不公平に仕事を振られる」という状況が裏にあることもあります。
そして能力が高い人だけが辞めていくと、残されるのは「能力が低い人」だけになり、その職場は地獄のような状態になることもあります。
一方、辞めてしまった能力の高い人にとっては何も困ることは少ないでしょう。
以上のように、「仕事が終わったなら、定時で帰らず他の仕事もやれよ!」という主張は、論理的にも通用しないばかりか、会社にとっても不利益な結果をもたらすことが多いです。
したがって、この主張自体が意味のないものになると考えられます。
よくある主張②:上司が帰るまで残れ
上司がまだ残業しているので、帰るのはやめておこう!
これも、よくある主張ですね。
日本企業では「部下は上司よりも先に帰ってはいけない」という意味不明な価値観がよく見られます。
私自身も以前はよくその犠牲になりましたが・・・
上司が退社する前に帰る人は、必ずと言っていいほど白い目で見られる風習がありますね。
自分の仕事が終わっているのに、上司に仕事を押し付けて帰るという行為は、まあ、睨まれて当然です。
しかし、自分の責任範囲の仕事をすべて終えて定時に退社しているのに睨まれるのは、先述したようにルール的にも、常識的にも、不条理なことだと思われます。
たとえ仕事が終わったとしても、上司が帰るまでは会社に残っていなければならないという命令に従うと・・・
自分にはやるべき仕事がないのに、無駄に会社にい続けることになってしまいます。
そしてそれは、非常に大きな「時間の浪費」です。
貴重な時間を家族と過ごしたり、副業に取り組んだりすることができるはずの時間を、無駄に会社に吸い取られることになります。
さらに、これを防ぐためには「わざと仕事のペースを落とす」ことも考えられます。
意図的に仕事を遅く進めて、ちょうど「上司が帰る時間」に仕事を終えるように調整するわけですね。
そうすれば、定時で帰らずに上司が帰った後に帰る、というポーズを取ることができます。
しかしこれはもちろん、まったく意味のない行動であり、このようなことを繰り返すと、仕事のスキル自体が低下する可能性もあります。
上司が定時で帰れないのは、その上司自身の問題です。
たとえ上司の役割が重かったり、それでなかなか帰れない状況に直面していたとしても・・・
それは「業務命令を出している会社」と「その上司本人」との問題であり、部下には何の関係もありません。
というような理由から、よくある「上司が帰るまで残れ」という主張も・・・
結局のところ、「定時で帰れないほど仕事ができない上司」が問題であり・・・
部下が巻き込まれる理由はまったくありません、と言えるでしょう。
よくある主張③:定時で帰るなんて、印象悪いよ
「仕事ができない」という印象が定時で帰る人について広まっているけれど、それは本当にそうなのだろうか?
定時で帰ることが「印象が悪い」とされる主張をよく聞くことがあります。
しかし、この主張には一面の真実があると言えます。
例えば、毎日遅くまで働き、限界まで仕事をする人と、自分の仕事が終わったら定時で帰る人を比べてみましょう。
この二つのタイプから、「会社や上司にとって」どちらの印象が良いのでしょうか?おそらく、前者の方が良いでしょう。
ただし、その「印象の良さ」は、出世を狙う場合に重要な要素となります。
会社で出世を目指すのであれば、印象を極限まで良くする必要があります。
特に、会社のトップ層である社長や取締役などの印象は重要です。
そのような上層部から良い印象を持たれるほど、出世の可能性が高まると言えるでしょう。
そのため、出世を目指す場合は、他の社員が敬遠するような難しい仕事に進んで取り組んだり、快く出張に参加したりするなど、積極的に印象を良くしていく必要があります。
私の以前の上司も、出世を目指して努力を重ね、その結果として印象を良くしていたと話していました。
出世を目指すのであれば、「定時で帰る」ことは避けるべきです。
定時で帰ると、印象を極限まで良くすることはできず、むしろ夢のまた夢と言えるでしょう。
むしろ、「会社のためなら何時まででも残業する」という姿勢を持つべきです。
しかし、出世を目指さない場合は、印象などどうでもいいものです。
定時で帰っても上司や上層部に良い印象を与えられなかったとしても、ただ会社で給料を得るだけが目的ならば、それほど問題にはなりません。
出世の意欲がないのにがんばりすぎて、上層部に好印象を持たれたとしても、「この人は無茶をさせても文句を言わない人」というレッテルを貼られ、ただ仕事を押し付けられるだけかもしれません。
出世の意欲がないのなら、それはただ損するだけです。
出世の意欲がない場合は、会社とはドライな関係を築く方が得策です。
そのような場合には、「定時で帰ると印象が悪い」といったことは問題にはなりません。むしろ適切な判断と言えるでしょう。
定時で帰る人は仕事ができない!は「気にしない」
このように、「定時で帰る人は仕事ができない」という言葉には、あまり取り合う必要はありませんが、上司や同僚が言ってくると気にしてしまうこともあります。
そのような言葉によってストレスが生じ、仕事の進行が妨げられる場合もあるようです。
そこで、このような場合には「気にしないスキル」を身につけることが解決の鍵になるのではないかと思います。
前述のように、「定時で帰る人は仕事ができない」という言葉は道理に合わない、不条理な言葉です。
したがって、その言葉の価値がないことを正しく認識することができれば、気にする必要がなくなり、デメリットを抱えることを防げるでしょう。
そういった観点からも、「定時で帰る人は仕事ができない」という言葉は気にする必要はないと思います。
以上が、今回の考察でした。