ADHDの治療薬にはいくつかの選択肢がありますが、その中でもコンサータとストラテラに焦点を当ててみましょう。
私は発達障害専門のプロ家庭教師や塾経営者として、ADHDのお子さまのサポートに携わってきました。薬物療法には個々の特性に応じたアプローチが必要であり、コンサータとストラテラはその一環として処方されることがあります。
コンサータ(メチルフェニデート徐放錠)は、不注意の特性によるぼーっとした状態に効果があります。一方、ストラテラは気分や情動を安定させるために使われ、衝動性が強く悩んでいる方に適しています(商品名は代表的なもので、一般名は括弧内に記載)。
重要なのは、症状に応じて適切な薬を選ぶことです。例えば、「集中できない」と感じても、それが不注意の特性によるものなのか、衝動性によるものなのかで処方が変わります。
ただし、薬物治療には抵抗感を感じる方もいます。薬についての疑問や不安がある場合は、主治医に相談し、自分が納得した上で服薬することが重要です。
また、ADHDの治療は薬物治療だけでなく、生活環境の調整や療育、行動療法、カウンセリングといったアプローチが組み合わさって行われます。薬だけでなく、多岐にわたる方法で困りごとを改善していく意識が重要です。
この記事では、コンサータやストラテラ、インチュニブなどのADHDの治療薬に焦点を当て、詳細に説明しています。ADHDの治療に興味のある方は、ぜひ最後までお読みいただければと思います。
ADHD(注意欠如・多動症)の薬物治療とは?
ADHD(注意欠如・多動性障害)における「注意散漫」や「多動性・衝動性」の特性は、主に脳内の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンの不足、あるいは神経伝達の調節異常によって引き起こされると考えられています。
この特性に対処するため、脳内の細胞間の伝達を助ける薬が使用され、それによって特性の発現が穏やかになるとされています。ただし、薬を使用しても一時的に状態を改善できるものの、ADHDは生まれつきの脳の働きの性質であり、その性質が完全に消失するわけではないことを理解しておくべきです。
治療では薬物療法が一部となりますが、他にも生活環境の調整や行動療法、療育など多岐にわたるアプローチが必要です。薬には副作用や依存性のリスクがあるため、一般的には「心理社会的治療」を優先し、それでも改善が見られない場合に薬物療法が検討されます。
困りごとの程度を評価する際には、「GAF(機能の全体評定)」と呼ばれる尺度が利用されることがあります。これは精神障害や知的障害のある人が社会生活を送る能力を評価するツールで、ADHDの薬物治療の必要性のほか、評点評価などにも使われます。
GAFの数値が高いほど精神が良好な状態を示し、心理社会的治療を行った上で評点が60以下であれば、薬物療法が検討されることがあります。具体的な症状としては友人関係や仕事への適応が難しい状態が挙げられ、これらが改善されない場合は積極的な治療が必要とされます。
薬物療法が検討される際には、主に以下の4種類の薬が考慮されます。
コンサータ(メチルフェニデート徐放錠):「不注意」の特性を抑える効果
ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩):ADHDの特性全体を抑える効果
インチュニブ(グアンファシン徐放錠):「衝動性・多動性」を抑える効果
ビバンセ(リスデキサンフェタミンメシル酸塩):ADHDの特性全体を抑える効果(※18歳未満のみ処方可能)
これらの薬の詳細な効果や特徴については、次の章で解説します。
ADHD(注意欠如・多動症)に使われる4つの治療薬|コンサータ・ストラテラ・インチュニブ・ビバンセ
ADHD(注意欠如・多動症)に対する治療薬として、以下の4つがあります。
コンサータ(メチルフェニード徐放錠)
「不注意」の特性に焦点を当てた治療薬。
ドーパミンを増やすことで脳の覚醒度が上がり、不注意や注意散漫、モヤモヤ感を軽減する。
効果が強力だが、興奮状態を引き起こしやすく、不眠、不安感、躁状態が発生する可能性あり。
衝動性が強い場合は衝動性が増幅され、注意が必要。
朝に服用することが一般的で、食欲減退の場合は栄養補助食品などで対策する必要がある。
ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩)
ADHDの特性全体に効果を発揮する治療薬。
興奮状態を引き起こすことなく、緩やかに効果が現れる。
衝動性や多動性、不注意などに対処し、全体的な安定感をもたらす。
興奮状態が少ないため、不眠や不安感のリスクが低い。
副作用として眠気や食欲増進が報告されている。
インチュニブ(グアンファシン徐放錠)
「衝動性・多動性」に焦点を当てた治療薬。
気分や情動を安定させ、衝動性や多動性を抑える。
興奮状態を引き起こすことが少ない。
眠気が副作用として現れることがある。
コンサータと併用されることがある。
ビバンセ(リスデキサンフェタミンメシル酸塩)
ADHDの特性全体に効果を発揮する治療薬で、18歳未満のみ処方可能。
コンサータと同様に中枢神経刺激剤に分類される。
興奮状態を引き起こすが、徐放錠であるため効果の変化は穏やか。
注意が必要な副作用として不安感や眠気が挙げられる。
使用時は医療機関での処方と記録が必要な規制がある。
これらの薬物は、中枢神経刺激剤の性質を持つものが含まれますが、依存性や副作用には慎重に対処する必要があります。特に、個人の症状や体質により効果や副作用が異なるため、適切な量と使用方法は医師の指示に基づいて調整されるべきです。
ADHD(注意欠如・多動症)が処方を受けるまでの流れ
ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩) は、脳内の神経伝達物質を調節し、シグナルの伝達を改善する作用を有しています。
主に注意散漫や衝動性・多動性といったADHDの特性全般を改善することが期待されます。特に、過集中(※)の改善において大きな効果があります。
※ADHDの過集中…一つのことに集中してしまい、他のことが手に付かなくなる状態。例えば、ゲームに熱中して寝食を忘れたり、同時進行の仕事をこなせなくなったりする状態を指します。
コンサータはADHDの不注意の特性に効果が期待される一方で、興奮を高める作用があり、不安障害や双極性障害の併発時には処方が避けられます。
一方、ストラテラは不安症状を軽減する作用があり、双極性障害やうつ病の併発者にも処方されることがあります。また、コンサータと異なり、ストラテラは脳の報酬系を刺激せず、非中枢神経刺激剤であるため、依存性がありません。
コンサータは服用したその日に効果が現れるのに対し、ストラテラの効果は服用を始めて1~2週間程度かかります。徐々に効果が現れ、安定した効果が実感できるのは服用から6~8週間後とされています。
副作用としては、肝不全や肝機能障害が挙げられますが、発現率は高くないです。一般的な副作用としては、頭痛や吐き気、腹痛などがありますが、これらは通常、服用初期に起こりやすく、継続して問題がある場合は医師に相談するべきです。